●前回EVをテーマにしたのには理由がある。実は今、世界のエネルギー業界では「オイル・ピーク(Oil Peak)」という言葉が流行っている。これは2015年前後に世界の石油生産量が最高値を迎えるという予測だ。
それがどうして問題なのかと云うと、油田開発で石油埋蔵量のピークを超えてしまうと、今度は残り少ない残量を採掘するため、より多くの採掘コストが必要になるからである。
●ちなみに経済産業省のエネルギー統計によると、地球全域で残されている原油採掘年数は40年余りであるという。しかしこれはあと40年間採掘可能ということでない。年数を経れば石油採掘は加速度的に難くなる。そして年々採掘が難しくなると石油価格は確実に高騰する。それがひいては石油資源にどつぷり安住している日本社会の行き詰まりを意味する。
●実際、現時点でも中国経済の拡大で、樹脂原料であるナフサの高騰が続いている。今後さらに石油が高騰すれば私たちの生活は激変するだろう。ゆえに原油を非効率に使う今の自動車のかたちはあと20年もすれば絶滅する。現時点でトラック輸送に依存している国内経済は、輸送コストの高騰で全国津々浦々から生鮮品を取り寄せられなくなる。
●またもうひとつの変化は、1940年代に生まれた「団塊の世代」が、来る2007年頃一気に定年を迎えることにある。これによって社会システムや労働市場だけなく、企業運営そのものに大きな問題が出ると云われている。
●しかしこちらの変化は、確実に減っていく石油埋蔵量とは違って楽観的な見方も可能だ。そもそも団塊世代は、学生の頃のベトナム反戦運動を経て、日本の高度成長を牽引し、バブル崩壊も経験した。そんな彼らは今、ひたすら先を急ぐだけの社会を見直しているよう見える。なかには自然回帰の流れから田舎暮らしを望み、農業を営むことによる自給自足の暮らしを始める向きも増えている。
●一方、日本の企業社会は、労働環境から退陣しようとしている彼らに新しい消費行動を促し、そこから何とか利益を得るべく様々な画策をしている。実際、その数の影響力から、団塊世代は未来の日本をどの方向に導くのか。その舵取りに関して大きな鍵を握っているといえるだろう。
●これまで団塊世代は、空前の軽自動車ブームを体験した後、多彩なクルマを経て高級乗用車へと乗り継いできた。そんな彼らが新たな21世紀においてどんなクルマを選択するのか。それは自動車メーカーの企業構想や将来をも左右する大きな分岐点になると思っている。
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