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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2008年1月アーカイブ

2008年1月アーカイブ

〜低迷する韓国の軽自動車マーケット〜

●隣国の、韓国自動車工業協会(KAMA)によると、当地では現代自動車のミドルグレード車であるソナタが、2007年の最多販売台数(10万5247台)を達成。さらに2位アバンテ、3位がグレンジャーと、世界規模で原油価格が高騰しているのにも関わらず、韓国内では依然、押し出し感の強い中・大型モデルに人気が集中している。同国の小型車枠で唯一気を吐いたのは中小企業の活力に支えられ、約7万台を売り上げた現代・ポーターだけである。

●そうしたなか今年から韓国内では、車幅が1.5メートルから1.6メートルに、排気量で800ccから1000ccへと、同国内における軽自動車規格が拡大される。これを受けて起亜自動車は、AT装備車で1リットル当たり16.6キロという好燃費と100万円に満たない手頃な車両価格を武器にした1000cc車モーニングを投入。これによって、それまで韓国軽自動車市場ただ一台の軽自動車として、ひとり舞台を演じ続けてきたGM大宇のマティズとの戦いの火蓋が切って落とされることになった。

〜韓国で自動車は乗るヒトを体現する鏡〜

●実はこれまで、韓国では軽自動車の販売は永らく低迷してきた。これは日本海の対面で、軽自動車の販売数だけが今日も伸び続けている日本国内とはまったく異なる展開である。もちろん韓国においても、日本と同じように軽自動車は、税制面や道路通行料の割引など車両維持に掛かる費用面でのメリットはシッカリと存在している。

●しかし韓国では「自動車を持つこと」に対してステイタス性を大変重く見ているところが、日本とは大きく違う。加えて「大柄なクルマの方が衝突時には安全だろう」とするステレオタイプの考え方も相まって、現代・起亜・GM大宇・双龍ルノー三星と数多ある自動車メーカーのなかでも軽自動車市場に進出する企業はホンのひとにぎりである。近年の韓国内で、マティズの競合と目されていたクルマは、現代のアトス、起亜ビスタ位であり、またそれらのライバル車達は、既に販売停止の憂き目を被り、韓国内の自動車マーケットからはとうに消え去っている。

〜日本の軽自動車が韓国市場へ参入する機運も〜

●つまり韓国では、「大きなクルマこそ成功の証と見なす」という国民意識が、エコな軽自動車市場発展の大きな障壁となっているのである。そこでこの2007年末、韓国政府の大統領職引継ぎ委員会は、年間243万バレルの原油節減効果を狙って、これまでは「小型車へのLPG搭載は危険である」と拒否し続けていた軽自動車とハイブリッドカーに対するLPGの使用を、2015年までの8年間に限定して認める意志を固めた。

●加えて日本からは韓国の軽自動車市場開拓を目指し、日本メーカー進出の機運が高まりつつある。その第一波は、GM大宇が仕掛ける三菱「i」の販売である。気になる車両価格は100万円を大きく超える見込みで、韓国市場の経済環境からは若干値が張る。しかし急騰している原油価格や、都心で悪化する交通事情を勘案すれば、軽自動車の販売比重が高まる可能性はまだまだ充分にあるだろうし、また韓国の聡明な消費者達はきっと正しい選択をするだろう。

〜韓国は世界の自動車社会に大きな影響を与える存在に〜

●翻ってみると韓国の自動車産業は、1960年代末から80年代後半にモータリゼーションのピークを迎え、1970年代にわずか7万台余りだった車両登録台数は、30年目の節目を迎えた2000年には336万台となっている。そして2007年。商用車も含めた自動車生産台数で、現代自動車は1社単独で453万台と3年連続で世界6位の自動車生産台数を記録するに至っている。

●それが意味するのは、もはや韓国が自動車の世界において一介の挑戦者では無いということだ。韓国はアジアの自動車社会という枠を超え、世界経済に大きな影響を与えるほどの自動車生産大国なのである。しかしそんな自動車生産と販売を支えているエネルギーは、目下のところ間違いなく化石燃料の石油であり、その生産量自体は2005年末の8,600万バレルをピークに、今この時も減少の一途を辿っている。近年の技術革新で、原油採掘と並行して石油抽出元の大地からは、新たに天然ガスも採掘されている。とは云え、いずれは発展途上国も含めた世界の石油需要に追いつかなくなる日は近い。

〜ひたすら消費することだけが幸福を生む鍵なのか?〜

●他方では石油をエタノール燃料に替えていくことで、「さらに自動車社会を維持・発展させていくことも可能」とする見識もあるようだが、本来人間のための食料であるはずの穀物を自動車燃料と競い合わせること自体、数多くの課題が山積しているのではないか?またそもそも石油から造られない新エネルギーのエタノールであっても、排出される二酸化炭素量はまったく変わらず、かつ現時点での燃料効率はエタノールの方が劣るのである。

●加えてサプライムショック覚めやらぬ金融市場から、膨大な投機資金が原油市場に流れ込んでいることを踏まえると、現時点で世界を支える米国経済が果たしていつまで安泰なのか予断を許さない。そうした環境下で950,000百万ドル余ものドル建て外貨を抱えている日本も心しなければならないことだが、韓国でも自動車生産・販売体制を「米国依存体質」から「内需確保型」の経済スタイルに仕立て直しておくことは必定となるだろう。

〜人の欲望は無限だが、地球の資源には限りがある〜

●21世紀を迎えた現代人にとっての人生の成功とは、「資源を浪費することで得られる幸せ」を求めて、沢山のモノを買い込み、大きなクルマに乗ることではないのだろう。自動車社会や人間社会を今後もより発展させていくために、我々は今日何をするべきなのか。一人ひとりが考えて・行動する、そんな時期に来ているのだ。

〜首都高・新料金案に2万人が意見〜

●2007年も押し迫った12月31日。YOMIURI ONLINEに、「首都高・新料金案に2万人意見、84パーセントが上限下げるべき」という記事が掲載された。詳細は「読売新聞」または「YOMIURI ONLINE」をご覧頂きたいと思うが、2007年9月に首都高速道路株式会社から、彼らのステークホルダである関連業界・政府・一般に向けて、普通車1200円・大型車2400円を上限に、距離別の段階的な通行料金を導入したいとするアドバルーンが挙がり、これに対して運送業界を中心に「実質的な値上げにほかならない」との反発意見が大勢を占めたのである。

●具体的には、今年9〜12月まで首都高速道路株式会社のホームページ等を通じておこなわれたパブリックコメント(意見募集)で、延べ2万1125人が回答。1200円の上限料金の設定について、84パーセントが「引き下げるべき」とし、「やむをえない」(11パーセント)や「適切」(5パーセント)の容認派を大きく上回った。

●パブリックコメントには、トラック運転手などの職業ドライバーや輸送系企業だけではなく、一般ドライバーからの反対意見も数多く含まれており、この結果は、当初、来春までに方針をまとめたいと云っていた同社の決定に影響を与えるだろうし、また首都圏道路計画についての過去の経緯から考えても、そうでなければならない。

〜新料金適応後のドライバーへの恩恵は軽微〜

●ちなみに当サイトの来訪者各位には、釈迦に説法かと思うが、首都高速道路株式会社の提案する通行料金の詳細は、現行で普通車が一律700円のところが通行料金を距離に応じて400~1200円になる。大型車(目下1400円)は、800~2400円にしたいと同社では考えているようだ。またこれはETCの利用が前提で、適応されると走行距離10キロ未満の場合のみ値下げになり、10キロ以上19キロ未満は同額に、19キロ以上は値上げになる計算だ。

●同社ではこの流れを加速するべく、ETCの積極運用を求め、横浜湾岸線の割引実験など様々な取り組みを積極展開中である。一方、現時点でETC利用を選択していないドライバーに向けては、「東京X」と呼ばれる新料金支払いシステムの模索を並行して計画中という。ただ現時点で現金払いの選択しか持ち合わせていない利用者であるなら一律、普通車1200円、大型車2400円の上限料金が首都高速道路の通行料となってしまう。

〜利用者へ還元されない民営化の見返り〜

●実のところ最大の問題はここにある。現通行料金の上限である700円で走れる距離が、改訂されるとたったの19kmまで(10kmから19km)となってしまうからだ。それ以上走れば距離に応じて料金は32.5km以上になるまで加算されていく。ゆえに残念ながらETCの利用の有無を問わず、多くの利用者にとって、新しい価格改定は、通行料金値下げの恩恵には決してあずかれないしくみということなる。

●そもそも首都高速道路の通行料金に関しては、道路建設当時の政府公約ではなかったかも知れないが、「将来は無料になるという」をふれこみで始められた。
そしてそれが何度となく先送りになった末に、小泉改革の渦中で首都高速道路は公団から民営化された。今回の動きは、その際の公約を果たすための料金値下げであるのだろう。

〜距離別料金制は最強のETC普及策〜

●けれども折角、民営化された首都高速道路株式会社なのだから、パーキングエリアにおけるビジネス展開など、収益拡大のための可能性は他にも残されているのではないか?率直な話、普段、慎ましくスーパーマーケットやコンビニで買い物をしている庶民感覚で捉えると、どうして現在の通行料金である700円がイキナリ倍近い1200円に値上げされてしまうのか理解に苦しむ。

●むしろ全国に点在する各道路運用会社は、人員削減を筆頭とする自社経費のコストダウンのため、道路を使ってくれているユーザーにETC機器を購入させるという負担を強いてまで、個人情報の取扱面で一抹の課題が残る現行ETCの普及を一心不乱に進めている。距離別料金制の導入は、そうした意味で、「最強のETC普及策」と云う穿った見方もできるのである。

〜交通行政を真摯に捉えた対策が不可欠〜
●ただその内容からみて、簡易版というより「次世代型ETC」とも云える「首都高X」を含め、ETCそのものは世界に誇れるしくみであるのだから、距離区分の最小料金単位を100円や50円からのスタートにするなど、細かく運用管理することも可能なのではないのか。先に開通した首都高速中央環状線の世界最先端トンネルもイイのだが、今回取り上げたニュースは生活密着という切り口で、より重要かつ注目すべき話題のハズである。

●首都高速道路株式会社は、申請案を2008年春までにまとめ、2008年秋から距離別料金への移行を目指す。しかしあくまでも同社から発表された料金案は「意見募集案」であり、決して決定したものではない。話題と云えば、かつて首都高速道路についての報道で一時期、フリーウェイクラブが注目を集めた。

●道路行政に対するこうしたタイプの市民レベルの抗議は、違法性が強く、決して勧められるものではないが、社会や自然環境と折り合いをつけ「自動車で生活の質を高めること」には、例え市民レベルであっても、まだまだ成長の可能性が残されている。時代が「環境の世紀」を迎えた今日。今回のような曖昧な距離別料金制導入は、新たなクルマ社会を生み出す原動力にはならない。むしろ交通・流通網に対する無計画な経済圧迫は、早晩、消費者を直撃するだろう。

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