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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2006年8月アーカイブ

2006年8月アーカイブ

●近年、クルマの買い換えサイクルが大きく伸びたことから、自動車1台あたりの使用年数は、年を追う毎に長期化している。それはクルマがより永く使われることで、回り回って、おのずと登録台数が減少する自販連(日本自動車販売協会連合会)7月度発表の中古車登録台数でも明らかだ。中古車登録台数の具体的な下落数は、前年同月比8.6%減の39万6057台と、ここのところ4カ月連続で先細り傾向に歯止めが掛からない。なかでも乗用車の下落率は9.7%減と最も深刻である。

●同背景は、自動車ディーラーの新車販売実績の低迷により、相対的に中古車登録台数の原資となる下取り車両の数が大きく減少したことにある。ただこの問題は、実のところそれほど単純ではない。というのは、昨今のガソリン価格高騰も、新車の買い控え動機に対する強い抑制要素になっているからだ。つまり、この状況を的確に説明するには、これら複合的な要素をひとつひとつ、解きほぐして行かなければならない。

●ただ確実に言えることがひとつある。それは、現段階の国内中古車市場が大変、過酷な環境下にあるということだ。しかしその見方を、自動車の「販売総額換算」という別の確度から眺めてみると、先の過酷な環境下とはまったく異なるデータが浮かび上がる。

●この中古車の販売総額という数値を見ると、今でも、新車販売総額の3割相当に匹敵する数字を中古車マーケットが叩き出していることが判明するからである。しかしそもそも販売車両の絶対的なタマ不足に悩んでいるはずの同市場。なのに、これだけの高成績を出し続けているというのは何故なのか。実はその背景には、日本の中古車市場独特の流通構造に隠されている。

●現在、日本国内の中古車マーケットで生息する中古車販売店は、全国で実に1万3000社以上と言われている。またその車両販売形態はまさに多種多様で、メーカー直結のカーディーラーなど、新車販売を兼業しているところを筆頭に、高級車限定や輸入車限定、さらにはスポーツカーやSUV車だけなど、特定車だけの販売に特化する拠点など実に多彩だ。一方、商材の仕入れルートに関しては、いすれの店舗も共通した場所で車両調達を行っている。

●大昔といってもホンの20年位前まで、市場販売用中古車の調達経路は、横のつながりがある新車販売店同士の融通や、販売店主が持つ独自のコネクションを駆使するなど、意外にそのルートは限られていた。しかし昨今は、中古車流通専業間による競り市場が発達。今は全国各地のオークション会場から、ネットを通して車両を調達、それを店頭に並べるのが一般的となっている。

●そもそも中古車取引というのは、たとえ同一車種でも仕様や状態に違いがある「一物一価」の世界だ。このため全国各地で、プロたちのための中古車競売のしくみが確立。今日もオークション会場で、中古車両の取引が行われている。また近年では、衛星通信と地上回線を組み合わせたバーチャルな中古車オークション市場も活発化している。ここまで車両調達が簡素化・イージ化されたことから、1990年代以降、特に新車ディーラーはそれまでは新車を売るための実質的な値引きでしかなかった中古車事業に俄然注力し始めた。

●これには、近年の国内新車販売台数が低迷していることにもその一因がある。というのは、新車販売数が前年割れを繰り返す程、低迷していることから、2000年初頭は各ディーラー共に値引き競争に走らざる負えなかったかったためで、新車販売の利益率が10%以下になってしまうことすら決して珍しいことではなかったからである。それに対して中古車販売の平均マージンは、実に30〜50%と大変な旨みを持っている。

●旨みの大きい中古車販売ビジネスにとって、唯一の関門はひとつだけだ。それは、玉石混肴状態の中古車の競り市場から、いかに人気車を仕入れられるかにある。このためトヨタ自動車は「T--UP」を、日産自動車は「カウゾー」などドライバーから直取引で商材調達に走った。ただこれはどれも、先行する独立系買い取り店を模したビジネスモデルの模倣である。

●かつては広大な自動車業界において、ビジネスモデルの発掘でも常に時代をリードし続けてきたトヨタなどの自動車メーカーだが、近年は、中古車販売戦略やクイック板金修理サービスなどで、中小事業者の後追いを演じ続けている。少なくとも自動車流通で、大手自動車メーカーがその覇権を握る時代は終焉を迎えつつあるかのようだ。しかも未来の中古車マーケットでは、一般消費者同士が自ら個人のXMLデータを検索し合って、互いに目当てのクルマを直取引で買う時代も刻々と近づいている。

●実際、世界最大のネットオークションである米イーベイでは、常時1万台を超える中古車が出品されており、日本でもネットオークション最大手のヤフーでの中古車取引は活況を極めている。つまり古き良き20世紀とは異なり、これからはインターネット網やWeb2.0の普及で、大資本だからといってそれがかならずしも勝者とならない時代を迎えているのである。

●もはやこの流れをせき止めることは難しい。ことによると近しい未来には、今日全盛の大手中古車情報雑誌がその役割を突然終える時期が来るのかも知れないのだ。そのなかで当面、先行する独立系中古車ブランドとの競争に、大手自動車メーカーが想定通りに打ち勝てるのかどうか。当面、その勝負の行方をじっくり静観したい。

国際自動車競争に生まれつつある新潮流

●米国誌ビジネスウイークによると、IT企業の新王者と目されているグーグル(24位)を尻目に日本のトヨタが約279億ドル(約3兆2400億円)のブランド価値を獲得。華やかな国際ブランド番付で、7位の地位を獲得した。

●一方、国内自動車メーカーのなかにあって、軽自動車造りにこだわり続け、地道な企業経営を積み重ねたスズキは、今年4〜6月期の営業益で前年比18%増の340億円、軽自動車シェア3割超をマーク。売上高でも19.8%増の7638億円と、2003年来の好成績を記録している。

軽自動車造りだけでないスズキの実力

●ところがスズキが過去30年間、一度も首位を明け渡したことがない国内軽自動車市場は飽和状態だから、大幅増が望めるレベルではない。つまりスズキが好成績をあげた背景は、欧米・中国・インドなど、海外での飛躍的な販売増によるものなのである。同社はエスクードとスイフトに加え、ニューカマーSX4の世界戦略車を配し、国際ブランドとして確固たる地位を掴みつつあるのだ。そんなスズキは、かつてのバブル景気のなかでも「身の丈にあった企業経営」を信条に、決して高級車路線には走らず、役員達は皆勧んで自社のコンパクトカーに乗っていた。

国際的な輸出企業として戦前から君臨

●そんなスズキの歴史は1909年、創業者の鈴木道雄氏が「鈴木式織機製作所」を浜松に創業したことに始まる。1920年に鈴木式織機として法人設立を果たした同社は、戦前の早い段階で東南アジアへ織機を輸出する国際メーカーでもあった。自動車に関する研究は1936年頃からで、戦後に補助エンジン付き自転車「パワーフリー号」が市場進出の切っ掛けとなった。その後の1954年に「スズキ自動車工業」に社名を改称。翌年、軽四輪車「スズライト」で自動車生産を開始。1979年に発表した「アルト」の爆発的ヒットで、名実ともに日本を代表する軽自動車ブランドの地位を確立した。現在は二輪車やマリン事業の他、住宅部門も抱え、売上構成比は四輪車78.2%、二輪車19%、その他2.6%となっている。

巨大企業も羨むスズキの活力と社風

●これまでスズキが、二輪レースで構築したブランドイメージは北米・欧州を中心にアジア・発展途上国において絶大だ。ハンガリーでは、フィアットと共同体制で新型SUVを開発。インドでは、ディーゼルエンジン開発の技術供与をアダムオペルやフィアットから導入。ASEAN各国では、世界戦略車APVを生産し中近東・中南米・南アフリカへ輸出するなど、生産拠点も世界各国でおよそ50にも及んでいる。1981年には、スズキのクルマ造りに魅せられたGMがラブコール。「クジラとイワシの提携」と揶揄され「いずれは飲み込まれてしまう」と囁かれた資本提携劇は自動車業界に大きな話題を提供したが、その結果は大方の予想を裏切るものとなった。

オイルピーク時代に勝ち残る資質とは

●というのは1986年、カナダでGMとの合弁会社を介して年間10万台規模の現地工場を設立。さらには南米に積極進出を図るなど、まさに巨大メーカーと対等の関係に終始したのだ。1990年には創立70周年を迎え「スズキ」に改称した同社。そもそも創業以来赤字を出したことのない同社の経営姿勢は明快だ。無駄を嫌う社是は首尾一貫している。筆者の知るところ、自動車製造に関わるコスト管理体制で、スズキに並ぶ会社はこの地球上に存在しない。コストダウンにかける意気込みは、事務方である企業広報のオフィスにも及ぶから、まさにそれは世界一と言っていい。

●思えば昨年、ケニア出身のワンガリ・マータイさんから、日本語には「もったいない」という言葉があることを改めて教えられた日本。
いままでと同じペースでエネルギーを使い続ければ、いずれ厳しい現実に直面する日がくる。しかしこれまでの消費神話・成長神話を方向転換すれば、未来の姿は大きく変わる。それはオイルピークを迎えた時代に相応しいクルマ選び、ライフスタイル選びに繋がっていくのだろう。

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