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マイトガイ「S」の自動車特選街: 第3面●自動車市場・流行アーカイブ

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〜世界販売車の4台に1台を保有する国〜

●今から刻を遡ること10年。2004年時における中国自動車市場は、まだ500万台規模(当時の世界生産6,395万台)に過ぎなかった。
しかし中国政府は、その5年後にあたる2009年度、1,600㏄以下の乗用車購入税を半減させ(10%から5%へ)、また中国内陸部での農用車を乗貨両用車両へ置き換える等の乗用車取得奨励策を実施。
これを期に、リーマンショックで低迷する米国市場を出し抜いて(2010年に1,851万台)、以降、世界で売れた新車のうち4台に1台を保有する国となった。

●以来、中国政府は、外資の力を利用してきた過去の産業育成手法からの離脱を模索し始め、生産から販売、アフター市場に至る全域で、自前主義へと軸足を移そうとしている。
こうした政府方針に応え、地場資本も精力的な活動を見せ、冷蔵庫の製造会社として生まれた後(1986年設立)、二輪車製造を経て1997年に四輪自動車事業に参入した「吉利汽車」のように、遂には外資のVolvoを飲み込む例(買収年度2010年)も現れている。

〜中国自動車市場の主導権を握る戦い〜

●一方で、独国資本のVWことフォルクス・ワーゲンは、市場開放の初期段階から中国参入を果たし(1984年、上海汽車と提携し市場参入)、2008年には、当時のVWが持っていた量産用車台(PQ34型)をベースに、上海VWの「朗逸」ことLavida、一汽VWの「宝来」ことBora(現在は新型車台PQ35型に移行)など、車両1台あたり10万元(2014年11月5日現在で187万円)以下のプライスラインで売れ筋のクルマを揃え100万台超の販売総数をマーク。中国国内シェア・ナンバーワンの座を守り続けている。

●対する中国国内の自動車メーカー各社は、地方政府が保有する中小メーカー等も含め、未だ100社以上がひしめいていて、その実力ならびに実績共に、未だ玉石混淆の状態にある。
また多くの消費層が年々拡大する所得増加に伴い、より高品質に、より高性能に、より高価格なクルマを求めていることから、電池メーカーとして生まれた比亜迪(BYD・2003年設立)の「F3」が2010年に一旦、乗用車販売台数第1位(26万台)になったものの、以降、販売上位へのランクインは果たせてはいず、純粋な中国資本が国内マーケットの主導権を奪うまでには至っていない。

〜日本メーカー各社が低迷するなか、マツダに勝機アリ〜

●ただ中国市場に外資が参入する際は、当地企業との50%以内の出資比率を背景とした合弁でしか中国進出が果たせず、また不透明な政府の認可を取得しなければならないことから、技術的優位に立つ外資企業であっても、中国自動車市場での覇権拡大は容易なことではない。

●そうしたなかで、PSA出資を果たした東風汽車(2014年4月に14%の出資完了)を筆頭に、第一汽車や一汽轎車などの現地企業と組みするなどして、外資の一角を占めてきた日系メーカー各社も、努力むなしく永らく苦戦が続いてきた。しかしこの2014年に入ってから、気丈にもマツダのみが販売台数を伸ばし続けてきている。

〜ふたつの製造・ディーラー網から中国ユーザーへ〜

●具体的には直近(2014年11月4日発表)のマツダこと「馬自達」の2014年10月の中国内における自動車販売台数は、トヨタ、日産、ホンダがおしなべて販売目標値を達成できない可能性が見え始めているなか、2013年同期比較10.5%増の1万9788台に達している。

●現在マツダは、中国国内で第一汽車との合弁である「一汽マツダ」。長安汽車との合弁の「長安マツダ」というふたつの製造・ディーラー網を持っているが、この10月の自動車販売台数の内訳は、一汽マツダの販売台数が、前年同期比19%減の8859台。長安マツダが、前年同期比56.8%の大幅増加を示し1万929台となった。

〜3世代のアテンザ併売でも売れる特殊性〜

●他の日本車メーカー各社が中国で低迷している原因は「新車導入ペースが遅いこと」「販売価格の設定に違和感がある」と当地では云われている。つまるところ中国消費市場の変化していくスピードに追いつけていないのである。
一方で、中国当地のマツダ・アテンザこと「馬」は、初代「馬6」、2代目「馬6ルイイー」、そして最新の3代目「馬6アテンザ」と、3世代の新車が微妙な価格差で今も併売されている。

●現在、中国マツダは「一汽マツダ」と「長安マツダ」という2つの販売チャンネル下で、総計435の販売店があり、うち235店舗が一汽マツダ、残り200店舗が長安マツダとなっている。
個別チャンネル網での取扱車種は、一汽マツダが、馬6ことアテンザ(新旧)、馬8ことMPV、馬5ことプレマシーとCX-9、MX-5こと輸入車種のロードスター(輸入完成車に対する関税課税率は25%、MX-5の場合、ここに増値税や流通コストが加わる)。
長安マツダでは馬2ことデミオ、馬3ことアクセラ(新旧)とCX-5となっている。
なかでも3世代を併売する馬6(アテンザ)と云う車名は、もはや自動車メーカーとしての馬自達(マツダ)ブランドよりも知名度が高い程の人気で、昨年2013年度も、馬6だけで9万4000台を売り上げた。

〜クルマ造りのブランド価値はどこにある〜

●当のマツダではクルマ造りに対して、「マツダのクルマには競合車がなく、自社独自の価値を世界に提供する(小飼雅道社長)」と語っており、10%の熱心なコアファンを獲得することを通じて、世界シェア2%を取ることが目標であると云う。
その志は明確で「値引きしなければならないような退屈なクルマはつくらない、今後も生き残っていくために、高くとも欲しいと思われる車を作り、結果、世界で走る車のなかで2%のシェアを死守していく(小飼雅道社長)」戦略だ。

●もはや自動車製造の世界においても、家電製品やIT製品などと同じく、車両の構成部品は、高度な「すりあわせ技術」を要しないモジュール単位の組み合わせが増えており、今や自動車メーカーにとっても「商品の構成力」が最も重要なブランド価値の生命線となってきた。

●このため、もはや商品を設計・構成していく際の実現力が低ければ、独自のブランド価値が作り出せない時代となった。
そもそも中国市場は、世界でも特に突出した経済規模であるゆえに、かつての米国市場と同じく、地場の自動車メーカー各社は国内での地位確保に腐心する傾向が強い。従って海外進出を目指す指向性が低いのだ。
このため今後、中国国内市場が成熟に向かうにつれ、新興国らしい特殊性はますます薄れるようになり、米国市場同様、世界各国の自動車メーカーがひしめき競合する場となっていくことから、魅力的な商品の選択肢は、幾らでも登場してくるだろう。

〜世界シェア2%というシンプルかつ厳しい命題〜

●つまり10%の熱心なコアファンを獲得することを通じて、世界シェア2%を取る...これが中国においても自動車ファンに伝わらないとマツダには明日がない。そうした企業の強い意志を独自のクルマ作りに込め、ブランドというカタチにして熱狂的なマツダファンへ届けなければならない。
そこにはボディ設計に対する想いがあり、骨格構造に対するこだわりがあり、結果として形作られるスタイルにもあり、ボディカラーにも、手に触れる質感にも、さらにはプロモーション手法からセールスに至るまでのすべてに、一貫性が求められる。

●突き詰めるとクルマというものは単なる移動の道具ではあるのだが、それでいながらも、乗る人の感性に訴えるものだけに、作り手のメッセージが伝わる集合知の結実したものでなければならない。
マツダの場合、世界で2%を目指すと云うその想いがブランドとなって、ようやくユーザーに見えるようになってきたのだろう。
〜デリーオートエキスポ〜

●2010年1月1日付で、VW業務窓口を浜松本社ならびにドイツに設置したスズキは、単一国に於ける自動車生産数100万台を狙いインド投資を繰り広げてきた。 
結果、既にインド国内の販売実績は72万台(輸出を含めた販売台数では前年比3.6%増の79万2,167台)。乗用車市場では5割のシェアを誇るまでになっている。 

●そのインドで昨日から自動車ショーの祭典「デリーオートエキスポ」が開催されている。 
実は、同国の空の玄関口であるインディラ・ガンジー国際空港から、デリーオートエキスポが行われているニューデリー市に向かう幹線道途中には、インド国内シェアトップを誇るマルチ・スズキに相応しく、かつ真新しい本社ビルが見える。

〜トップメーカーとしてのスズキ〜 

●世界の自動車メーカーの首脳たちは、その佇まいをデリーオートエキスポに向かう車窓から眺めながら、「1981年にマルチ・ウドヨグとして発足、1983年に同国ハリヤナ州グルガオン工場で自動車生産を開始。
以来、着実な成長でインド国内で強固な信頼を獲得するに至ったスズキの躍進」を思い知り、市場浸透率の深さにさらなる想いを馳せるに違いない。 

●さて、そんな本社ビル建設だけなく、スズキにとって2009年は、インドを代表し、かつ牽引する押しも押されぬトップメーカーとしての存在感を世界に与えた年であった。

〜もはや中小企業とは言わせない〜 

●昨夏は同国の首都、ニューデリー北西に位置する「ハリヤナ州ロータク」の産業モデル都市に、280万平方メートルに及ぶ広大な区画を取得。

●2015年完成を照準に、衝突実験設備や風洞実験設備の他、最新のテストコースを備えた自社R&Dセンターを設置する計画を発表した。 
スズキはこのインドの地を、自動車開発のハブに見立てて世界展開を視野に入れた小型車造りの基地開発を目指し始めたのである。

〜日本は海外からクルマを買う時代に〜

●日産が次期マーチを、アジア発信の国際商品とする計画を打ち出し、その完成車を日本国内に輸出する構えを見せているように、スズキは、インドに於けるマルチ・スズキが持つロータクR&Dセンターをハブに、既に同社の自動車生産拠点であるマネサール、グルガオンを繋ぎ、デリーオートエキスポ開催当日に自動車販売打数トップに躍り出た中国と、伏兵、韓国を迎え撃つ。

〜小型車だけじゃないスズキのチカラ〜

●スズキの日本ならびに米国に向けた動きでは、先に日米同時発売で話題を提供したキザシが順調に滑り出している。 

●同車の特徴は、足回りの特性など従来のスズキ車にない欧州車テイストにある。
正直、飾り気の無い装飾等、内外装共にかなり日本車離れしたインターフェイスで、独車や北欧車を志向する向きには歓迎される手堅い造りが売り。また同車へは近々、GMと共同開発したハイブリッドユニットが搭載される見込みでもある。 

〜強固なインド国内のサービス拠点〜

●加えてスズキで興味をそそるのは、戦略上のイコールパートナーとなったVWとの関係だ。 
そもそもVWは、インド国内に満足な自動車インフラのサービスネットワークを持たないから、自動車開発のパートナーとしてのスズキの存在にも増して、おそらく延べ1000拠点に迫るマルチ・スズキのサービス網に魅力を感じているのであろう。

●しかし当のスズキは、インドオートエキスポで、同国の国家プロジェクトを背景に開発された電気自動車「バーサ」を筆頭に、ハイブリッド車「SX4ハイブリッド」や、6人乗り多目的車「コンセプトR3」を発表。 
来る2015年には販売台数で400万規模に倍増すると見られるインド市場に於いては、VWと協調していくというよりも、世界の自動車メーカーを向こうに回して、過酷な生存競争に挑む構えが見える。

〜スズキを追う立場のトヨタ〜

●一方、世界規模でトップシェアを誇るトヨタは、インドの国内シェアは僅か2.3パーセントしかない。
トヨタは、デリーオートエキスポで、アジア圏での部品調達率を半分を大きく超えるまでに引き上げた1500ccセダンと、1200ccハッチバック車「エティオス」と共に、2010年の発売を決めた「プリウス」を繰り出し、インド国内の自動車販売実績倍増を目指している。

●またホンダは、フィットのプラットフォームを設計思想の基礎に据え、製造コストの大幅削減を達成した1000ccクラスのコンパクトカーをぶつけていく構えだ。 
対するスズキは、ドイツ約2割増、フランス約5割増と、一部のマーケットでは依然、好調さを見せる欧州対策車としてのAスターや、リッツ(スプラッシュ)を相次いでリリース。日本国内でのライバルメーカー各社は、ここインド市場でも手強いライバルとして、疾走するスズキのシェア5割の切り崩しを狙う。

〜見えてきた自由貿易圏の夢〜
 
●ちなみに今後、アジア域内は、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)の他、インドと韓国の経済連携協定(EPA)も発効、日本もASEANとEPAを発効。 中国と韓国は、ASEANとの間で大半の品目の関税を相互撤廃する流れから、このASEANを軸にした約32億人という巨大市場が「自由貿易圏」という大きな夢に向かっていよいよ動き始める。

●目下、現時点で世界シェアトップのトヨタは、ダイハツ工業・日野自動車を除く2010年の世界生産計画において、2009年実績見込み比109万台増の749万台(北米2009比30万台増の156万台。欧州同5万台増の57万台。中国同18万台増の79万台、中国を除くアジアは同13万台増の95万台)を目指しているが、中期・長期的視野から見ると、ASEANを軸とした域内は、貿易・投資競争に大きな弾みがつく。従って中国自動車メーカーの躍進は確実である。日本の自動車メーカーのアジア戦略にも大きな影響を与えていくだろう。
 
〜コンパクトカーメーカーが消えていく〜 

●そうしたなか日本国内ではスポーツ車メーカーでありながらも、コンパクトカーメーカーの一社でもあったスバルの動きを眺めると一抹の寂しさがつきまとう。

●それは資本関係のあるトヨタとの強固な連携体制の結果、とは言え、折角、三菱自動車と並んで2009年に量産EVのプラグインステラを世に問い、この2010年には200台のEV販売を計画しているにもかかわらず、ステラ自体の生産が2011年6月まで。さらにすべての軽自動車の生産が2012年3月を以て完全に潰えてしまうからだ。

〜日本の小さなクルマが世界を牽引する〜

●日本の軽自動車は、鎖国的とも言える限定市場のなかでの極めてドメスティックなセグメントでしかないのだが、開発思想やコスト削減手法、またクルマ造りの考え方では、今後、「現行の小型車よりは若干下を目指す」とする世界戦略車の礎になりえるものと思う。

●ただもはや日本国内市場に於いても、660ccという現在の軽自動車の排気量区分は、決して最適とは言えないから、この際、EV搭載も含めた出力別による税法優遇措置を導入するなど、まったく新しい視点を携えて、世界市場でも勝負することのできる新しいコンパクトカーの姿を追求して欲しいものと、業界の書き手としてだけではなく、いち自動車ファンのひとりとしても、一重に願うばかりだ。

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