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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2004年12月アーカイブ

2004年12月アーカイブ

●2006年からレクサス店以外のトヨタ傘下ディーラーでは「セルシオ」の販売ができなくなる。これまでトヨタの販売網は、トヨタ店・トヨペット店・カローラ店・ネッツ店と、ビスタ店の消滅後4チャンネル化していた。しかし2005年8月の「レクサス店」の追加で再び5チャンネル体制に戻る。そして2006年にはレクサス店で「LS(現行セルシオ)」の販売が開始されることから、当然のことではあるが既存ディーラーは現行セルシオを販売できなくなるのだ。

●ちなみにレクサス展開に関するビジネスモデルはご承知のように、いち早く米国で成功を収めている。米国でのレクサス成功の要因は、「限定店舗としたことによる販売店の希少価値」「トヨタ生産方式を背景にした流通車両の希少価値(実販売製品のみを生産するオンデマンド方式)」「洗練された販売手法や顧客対応」などの徹底したブランド戦略がある。日本国内市場でも同様の手法を使い、メルセデスやBMWなど、高級輸入車へと流れる上級ユーザー層をキャッチアップする構えだ。

●そこで、ここのところ数年間掛けて国内系列ディーラーの再編を加速させ続けたトヨタは、この12月21日に全国140店舗(順次当初予定の180店舗に拡大)で、米国譲りのレクサス網を立ち上げると発表を行い、さらに国内レクサス網で投入第1号モデルとなる「GS(新型アリスト)」も公開した。

●しかしトヨタは現時点で、現行セルシオに代わる新型車の投入を計画していないため、このままいくと、多くのトヨペット系ディーラーなどでは2006年以降は、「マークX」が最高価格帯商品となってしまう。当然、販売するタマがなければ優良顧客を失うのは明白で、レクサス店を獲得できなかった地場ディーラーでは顧客喪失の不安を拭いきれない。そもそも系列ディーラーの多くは、地場の有力資産家が販売権を得て独立営業していることから、商品ラインから高い利益が見込める高級車がなくなるのは大きな痛手だ。

●ちなみに自動車に限らず工業製品全般の工場出荷価格は、最終販売価格の約半分と云われており、そこから流通経路上で最終商品化に掛かる経費やマージンが載せられて消費者との接点となる販売店に卸される。車種によって販売価格帯の広い自動車の場合、その比率にブレはあるものの、高価格商品の方が既存店にとっても収益が得られる商品であることは間違いない。ゆえに現行セルシオは、既存系列ディーラーにとって虎の子商品である。

●ただセルシオの併売は、米国ビジネスモデルの日本国内実現を目指すトヨタとしては不可能で、これまでにもあった中途半端な車両投入は消費者が許さないだろう。このため今後180店舗へとレクサス販売網を拡大していくなかで、系列店の要望を吸収していくのだろう。

●いずれにしても日産の販売網統合の動きを含め、国内自動車メーカーの傘下で、これまでの車種ラインナップやフランチャイズド展開が永遠に続くとは限らない。日本国内でも新たな展開を模索する地場ディーラーが登場するなか、欧州での展開を含め、個々の自動車ディーラーは独自で自活の方策を探っていく必要があるようだ。

読売新聞に「専門家が選ぶカー・オブ・ザ・イヤーは最新技術や個性的な車が選ばれることもあり、消費者の好みと一致するとは限らない」といった主旨の記事が掲出された。ちなみに今年の「カー・オブ・ザ・イヤーは、日本カー・オブ・ザ・イヤーにホンダ「レジェンド」、RJC カー・オブ・ザ・イヤーに日産「フーガ」が、さらに日本自動車殿堂カーオブザイヤーにはトヨタ「クラウン/クラウンマジェスタ」が選ばれている。

●つまり現在、日本には3つのカー・オブ・ザ・イヤーが存在している。確かに様々な視点でベストなクルマを選ぶ機会は多い方がイイ。ただ偶然とは思うが、結果的に今年は各社の投入した高級セダンがそれぞれ揃い踏みで選ばれたことになる。こうしたケースではある意味消費者にとって、ベストカーがかならずしも車種選択の理由にならならない場合もあるように思う。

●そこで選択枝の一助になるよう、ここではそれぞれの選出団体の背景を紹介してみたい。まず「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を選出する日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は1980年代から始まった。その「目的」や「基本精神」「選考基準」は、同サイトCOTYとはに詳しく出ている。実行委員会そのものは、主催社一覧にもある通り出版メディアが主体だ。

●RJCカ・オブ・ザ・イヤーの主催団体は、日本自動車研究者・ジャーナリスト会議で、同団体は2000年に特定非営利活動法人となっている。第1回の選考は1992年次から。RJC設立の目的・会員資格・活動内容は同Web上で定義が掲げられている。2004年会員名簿によると、団体メンバーには自動車ジャーナリストの他に自動車交通や工学の研究者が含まれていることがわかる。

●自動車殿堂カーオブザイヤーを選ぶのは、自動車殿堂。同団体もRJCと同じく特定非営利活動法人である。自動車殿堂のカーオブザイヤーは同サイトによると2002年からで、今回挙げた3団体のなかで最も新しい。設立主旨選定概要会員については、同団体のWebサイトに掲出されている。

●いずれも団体メンバーには多様な組み合わせがあり、それによって選出基準や対象が異なるということなのだろう。ただ広大とは言え自動車業界における有識者の世界はそれほど広くはない。今回のように同一カテゴリーのクルマが対象となったケースで、これだけ意見が分散すると、消費者はどの団体を信じれば良いのか悩むのではないか。時代は消費者の多彩なニーズに応え多品種少量生産の時代に入っている。現在の選択方法や基準もひとつの方法論とは思うが、ブログサイトの拡大などの背景を含め、「消費者が直接カー・オブ・ザ・イヤー選考に参加できる」。そんなしくみがあっても良いように思えてならない。

●1981年から始まった「GM」と「スズキ」の戦略的提携関係。当初は世界ナンバーワンメーカーであるGMに飲みこまれると危惧した業界人も居たが、今や両社はアジアやインド、東欧、欧州、南米と世界各地で高い相乗効果を生み、GM会長兼CEOリック・ワゴナー氏と、スズキ会長兼CEO鈴木修氏の蜜月関係はさらに深まりつつある。

●今回のV6エンジン生産の話も、かねてからの戦略提携の一環として以前から合意していたもの。それがいよいよ実行に移されるわけだ。具体的な生産拠点は静岡県相良町の相良工場。ただし既存工場を改良して生産対応するのではなく、当地にV6エンジンの専用工場棟を建設するかたち。本格稼働は来る2006年の6月からで当初の年産能力は6万基の予定。

●生産するユニットはGMが独自開発したオールアルミ製エンジンで、バンク角60度のDOHC24バルブ形式。対応排気量は2.8リッターから3.6リッターまでと幅広い。GMではすでにカナダのセントキャサリン工場やオーストラリアのフィッシャーマンズベンドにあるホールデン社の工場で同エンジンを生産中。スズキでは当面、グランドエスクードの後継車種に搭載し、加えてGMの世界戦略構想に対応可能な増産体制も敷く構え。

●また2005年に開催されるデトロイトモーターショーでスズキは、ミッドサイズSUVの「Concept-X」を出展。GM・スズキ連合による北米・世界戦略はさらに深く進行しつつあるようだ。思えばスズキが北米展開を開始したのは1963年のオートバイ販売が最初。それから40年以上にわたる活動があるからこそ、現在のGMとの戦略的提携に結びついたのだろう。

●一方日本国内におけるスズキは、マニア受けし難い軽自動車を中核に据えているためか、自動車オタクには影が薄い。しかし実際には大量生産でないと割が合わないといわれるエンジン生産事業で、エスクード専用のV6エンジン生産をこなすなど、自動車生産に関する基礎能力はとてつもなく高い。

●近頃はコンピュータ・シミュレーションよる自動車生産・設計が可能になっているが、実際に役立つ現場の技術はスズキがいうところの「3現主義(現場で、現物を、現実に)」なくしては実現できない領域がまだまだある。また日本国内における軽自動車の平均車両価格は、他社の1リッターカーより高く、販売台数もそれらを大幅に上回っていることから、実のところスズキは日本国内においても隠れたトップメーカーなのである。

●肝心の実車でも欧州戦略車として開発された新型スイフトの仕上がり感は上々で、とてもアルトを生産・販売している同一メーカーとは思えないパッケージ能力を発揮している。これまではその能力をコスト削減に集中してきただけで、フロンテクーペやジムニー、カプチーノと同社が「やればできる」メーカーであることを忘れてはいけない。トヨタや日産など華々しく活動するメーカーだけに注目しがちなメディアだが、案外、未来の「勝ち組」は意外なところから出現するのかも知れない。

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