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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2007年11月アーカイブ

2007年11月アーカイブ

〜金太郎飴みたいなクルマが増殖中〜

●千葉県・幕張メッセで行われている「東京モーターショー」がいよいよ終盤を迎えるなか、日本自動車販売協会連合会が、昨月10月度の新車販売・登録車台数を発表した。

●それをここで紐解いてみると、10月実績では前年同月比で約2パーセント増の26万9221台という記録が見て取れる。この数字は単月で見ると、まずまずの様にも思えるのだが、現実には今年も残る月数はわずか二月(ふたつき)のみ。結局、2007年の新車販売台数は、順調に推移しても精々344万台の予測と、前年からおおよそ7パーセント近く低下する見込みである。

●そんななかトヨタは、軽自動車を除く同月10月の国内新車販売シェアで51.5パーセントと、月間で初の5割超を達成した。これまでトヨタの単月シェアは、2006年11月の49.4パーセントが最高値だったので、13もの国内メーカーがひしめく日本の自動車マーケットにおいて、いよいよ勝ち組・負け組が明確になってきたという見方もあるようだ。しかしどれどれと、いざ蓋を開けてみると、トヨタ単独で月に1車種以上のペースで新車を投入しているゆえの結果であると言えなくもない。

〜そろそろメーカー満身の一台が見たい〜

●これまで一般的には、一台の自動車開発にあたって、大きな投入資本や永い開発期間が掛かるものだった。それが近年では、プラットフォームの共通化や、自動車生産技術の発達で、腰上の車両デザイン変更の自由度が大きく高まってきていることから、比較的企業体力のあるトヨタがひとり、同一基本性能を持つ骨格へ金太郎飴的に様々なボディ架装しているだけ。

●そうして耐久消費財の典型である自動車が、手を変え、品を変え式に、次々と市場に投入されることで、消費者の製品選択の幅は広がっているものの、自動車メーカーがじっくり本腰を据えて造った満身の一台を、そろそろ見たい気がしているのは、おそらく筆者だけではないだろう。

●また実際には、トヨタ単一の国内販売数でも160万台半ばと、過去の実績を確実に下回っている訳で、日本国内の自動車マーケット環境は、決して順風満帆と言えない。むしろ日本国内市場の低迷は一層深くなっており、むしろ海外依存の体質がより強まっている。

〜国内市場が自動車開発の核であるべき〜

●こうした日本メーカーの状況を、より細かくウオッチするためには、国際的に極めて特殊な環境下で日本独自の規格車である「軽自動車」を作り続けてきたコンパクトカーメーカーを診れば良い。例えば、先のトヨタの傘下にあるダイハツ工業は、2007年9月の中間発表によると4月〜9月の車両総販売台数で63万7000台と、前年同期比0.9パーセント増となっている。

●けれども実のところその内訳は、国内が26万7000台と3パーセント減である一方、海外では17万9000台で8.3パーセント増。受託生産車が17万5000台で0.6パーセント減。OEM車が1万5000台で同11.4パーセント増となっている。

●特に上記のなかで「OEM車」という区分は、同社が活性化させているインドネシアでのOEM供給による増加分にあたる。つまるところ日本の自動車メーカー各社は、国内市場の低調を、現時点では比較的好調な海外販売でカバーする図式が固まりつつある。

●このような動きはマツダの欧州販売好調など、日本メーカー全体のものだ。しかし原油高やサブプライム・ショックに伴う米国景気の減速懸念から、特に対米事業は不透明感が高く、海外マーケット依存が日本の自動車メーカーや日本経済全体を救うことになるかには、一抹の疑問がある。

〜団塊世代外にも注目せよ〜

●むしろ日本国内消費がさらに縮小し、若年層のクルマ離れがますます加速することは危険で、若者が買えるクルマが一層喪失していくマイナススパイラル環境は、早急に打開するべき段階に来ている。そもそも現代のクルマが抱える問題点は、自動車を走らせる交通環境の悪化や維持費の高騰など複合的な要素が絡み合っての結果だ。

●海の向こうの米国で、ライトトラック(日本国内で云うミニバン、SUV、クロスオーバー車が該当)が若者にもてはやされているのは、実のところ廉価な維持費が下支えしているからで、こうした事実は、今の国内自動車マーケットを打開するためのヒントになり得る事柄である。そもそも自動車がクルマとしての機能を進化させるため安全装備の搭載は必須であるが、多くの日本車たちは、そうではない搭載機能を付与し過ぎて、あまりに高価格になり過ぎている。

〜メーカーは懐古趣味に走るべからず〜
●東京モーターショーで展示された「NISSAN GT-R」に続き、トヨタもレクサスブランドのスーパースポーツカーのリリースを予定しており、この流れにホンダも程なく追従するだろう。しかし若者に必要とされているクルマは、そうした「懐古趣味的な憧れ」が出発点では無く、現実社会を支えている若年層が「乗って夢を描ける」クルマであるべきなのだ。

●もっとありていに云うと自動車メーカーが、スポーツカーを造らなくなったのは、若年層がスポーツカーを買わなくなったからであり、「スポーツカーを出せば若者が飛びつくだろう」という発想自体が、若者の求めるベネフィットを考えていく上で、原因と結果を逆転して捉えてしまっている。

●考えてみれば、若者の強力なカルチャーのひとつである音楽シーンでも、クルマが登場する場面は確実に減ってきている。それだけクルマの世界感は、若者文化とは大きく掛け離れてしまっている。結局、自動車メーカーの考え方自体が、現代の流れと大きく逆行している様に思えてならないのだ。

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