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マイトガイ「S」の自動車特選街: 第2面●自動車技術・環境アーカイブ

第2面●自動車技術・環境の最近のブログ記事

〜自動車業界がようやくITを語り始めた〜

●テレマティクスなどを利用し、クルマと外界をつなぐ高度道路交通システム。またクルマそのものの制御回路を無線化するバイワイヤ技術。
実は自動車業界において、ハードウエアと情報技術との融合に取り組んできた歴史は意外に旧く、1980年代からのASV(AdvancedSafetyVehicle)構想など、他の工業製品に先駆けて語られてきた。

●それから30年余りが経った今日。世界の自動車メーカーは「夢のクルマ造り」よりも、その間、事業体制の国際化に伴う激しいマーケットシェア争奪戦を繰り広げてきた経緯から、クルマの劇的な進化を心待ちにしていたオーナードライバーたちは、PCの世界で大きく進化を見せた情報技術の影響を、クルマ社会ではあまり実感できないまま新世紀を迎えている。

〜クルマが基幹システムにOSを求め始めた〜

●その流れに新たな変化が訪れたのは、昨年初頭から始まった原油価格の高騰と、それを追いかけるように同年晩秋にやってきた米国発の金融クライシスである。
これをきっかけに、日本ではPlug-inHybridCar(PHEV)の実用化に拍車が掛かり、米国ではPHEV開発を一気に飛び越えて、Electric Vehicleの製品化を推し進める構えだ。これにより、ようやくクルマの世界にも、自動車全域の統合制御を可能とする本格的なOperatingSystem(OS)を求める時代がやってきた。

●現実には、現行車1台あたりにおいても、ワイパー機能やブレーキアシスト機能、IDチップのコード照会を行うイモビライザ機能、エアバック等の走行制御や、現在の自動車では心臓部にあたるエンジン制御など、様々な機能領域でマイクロプロセッサと入出力モジュールで組み立てられたElectronicControlUnit(ECU)と呼ばれる制御用コンピュータが組み込まれている。

●しかし今後はクルマの運動性能や環境性能、安全性能の実現。さらに、より低環境負荷へ貢献できる動力システムを実現するため、近未来のクルマでは1台あたり100個を優に超えるECUの搭載が必要になると言われている。

〜もはやガソリンだけでクルマは走らない〜

●このように1台のクルマに多くのECUが搭載していくようになると、ひとつの動作だけでも複数のECU間を協調制御していく必要が出てくる。つまり自動車全体のシステムをより複雑かつ統合的に制御していけるOSの存在が必要不可欠になるのである。

●加えてECUそのものの数が加速度的に増えていくということは、製造コストやそもそもECU自体の設置スペース上の問題も発生する。したがって複数の機能をひとつのECUで実現していくことも確実に求められるようになるだろう。

●特にクルマは、天候や乗車定員、速度や走行部品の摩耗など、走行条件が複雑かつ場当たり的に変化するため、実走行データに臨機応変に対応していけるソフトウェアプログラムの高い柔軟性が欠かせない。

●また今後、自動車開発は旅行や買い物など、乗車1回あたりの走行距離の違いや利用ニーズの多様化に伴い、多品種・少量生産対応が車両開発および販売のマストスタイルになってきているため、組み込み部品の変更や、プログラムの置き換え上、優位かつ容易なOSの利用は避けては通れない。

〜プログラムがクルマ社会を変える時代に〜

●思えば自動車創世記の1800年代には、クルマの適切な動力源として、蒸気や電気など様々なパワーユニットが試され、その結果、1886年にドイツのKarlFriedrichBenzがガソリン自動車の開発に成功。それを追いかけるように米国のHenryFordが「Ford ModelT」の生産を開始(1908年)。以来、内燃機関をベースにした乗り物の歴史が幕を開けてから今年は丁度100年の節目を迎えている。

●クルマ社会は内燃機関をベースに、メカニズムのすり合わせ技術を育んだ時代から、電気を主動力としたプログラム技術が主役となる自動車の時代へと移るのか。2000年台という新たな世紀を迎えて8年目の今年。自動車技術の世界は、ここにきて大きな時代の変革期を迎えているのかも知れない。

〜リアルな現実として浮上するpeak Oil〜

●世界各国に点在する生産ラインから、1台造られる毎に90barrel(1バレルが約159リットルに相当)の石油を消費する自動車。それが年間4000万台単位(地球規模)のペースで増え続け、世界の自動車保有台数では、遂に9億の大台に乗るまでになってしまった

●その一方で、石油の供給不足感によって、身近な食品や生活物資が相次いで高騰。庶民生活のなかでは日々ガソリン価格に気遣い、エネルギーの消費量を倹約していくことが、もはやごくあたりまえのことになってきている。

●そうしたなか、これまでひたすら石油を消費してきた自動車の世界にも、やっと変革の波が見え始めている。自動車メーカー各社は、米国の地質学者ハバート(M. King Hubbert)氏が1950年代に唱え、早くも80年代にその正当性が立証されていた「ピークオイル(peak Oil)論」を、ようやく重く受け止め始めたのである。

〜エコカーの本命を巡る駆け引き〜

●目下トヨタ自動車は、兵庫県佐用町のJASRI(高輝度光科学研究センター)での放射光実験に対して積極的な投資をおこなっている。これは巨大なリング状の構造物の中で電子を走らせ、これに磁力を与えて放射光を作り出すもの。放射光は物質特性や微細構造を解析する能力を持ち、燃料電池車等の装置開発の進展を促す役割を担う。

●また日産自動車は、かつて富士重工業と共同で蓄電池開発を進めていたNECと共同研究体制を確立。「重量物を瞬発的に動かす」という過去の家電系電源開発では課せられなかった命題達成を目指して、新たな蓄電池研究に邁進中である。

●三菱電機も、実用EVの先駆けとなるiMiEVの市販化に向けて、一般道路環境での本格テスト運用を繰り返している。また海外では、GMが取り組む燃料電池車プロジェクトや、BMWの水素エンジン開発だけなく、スーパースポーツカーメーカーであるポルシェ社もハイブリッド車のリリースを間近に控えている。

〜新たなエコ技術がさらなる石油消費を呼ぶ〜

●しかし肝心の次世代車を動かすエネルギー供給の大転換については、お世辞にも「進んでいる」とは云えない。ただこれもある意味それもやむなしではある。というのは人類は、この地球の盟主となって以降も最近まで、数百万年もの間は森林から得た燃焼エネルギーを細々と使い続けて生命をつないできた。

●ところが産業革命を迎えてからは、地下に退席する石炭や採掘石油を使い始め早100年超の歴史を持つに至っているからだ。このためもはや化石エネルギーの恩恵は、人類の生活圏を広範囲に覆い尽くしている。それだけに石油浪費に麻痺してしまった社会構造を大きく変えること自体、今では大変な障壁になってしまっているからだ。

●加えて今後、日本における次世代エネルギー構想の一翼を担う燃料電車開発では、すでに車両側の障壁の多くが取り除かれているのだが、今は交通インフラの大転換を促すためのエネルギー供給施設整備など、多くのインフラ環境の進展が社会発展の大きな足枷となり始めている。
こうしたことから、個人的には大変残念ではあるのだが、燃料電池車が日本の街を颯爽と走り始めるまでには、「まだまだ数十年単位の期間が必要」というのが国内自動車業界における率直な実態感である。

〜環境先進国の覇権は意外な国へ〜

●そもそも仮に石油を主力エネルギーとする今の自動車を直ちに打ち捨てて、新たな低公害車を再生産するとしたところで、その分は社会インフラの現状消費に追加されるエネルギーとして消化される。つまり社会環境の大転換をおこなうには、その気本整備のため新エネルギー消費が必要になるだろう。

●しかし現時点で、わずか20パーセントのエネルギー自給率しかない日本は、1970年代にオイルショックで手痛い打撃を受けたのにも関わらず(1973年に石油供給の6〜9%が一時的に減少)、今日も石油原産国の厚意に頼り切っている。けれども、もはや今のOPECは中東の未来の行方こそ一番の関心事であり、他国に対する石油生産調整の余力などない。

●そんな中東諸国のひとつであるアブダビ首長国では、1兆6000億円を政府が投資し、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー源だけで町作りをおこなう未来都市研究「MASDAR(マスダール)」計画を打ち出している。
このような未来造りには、壮大なプランと莫大な経済投資を必要とするのだが、彼の地には社会を強力に牽引していく識者達に国を憂う深い思想があるのだろう。

〜一次エネルギーとは無縁ではない次世代動力〜

●そもそも元を正せば、水素も結局、石油などの一次エネルギーとは無縁ではいられない。それなのに燃料電池のエネルギー源である水素を「一体何から造るのか」というテーマが、日本のマスコミ報道からは綺麗に欠落してしまっている。すべてのエネルギー環境について、Energy Profit Ratio(エネルギー収支比)がどうなっているのかをまずは考えなければならない。

●石油価格がより高額へと跳ね上がった後の生活をどうしていくのかを考えること。
それは、化石燃料が支えてきた社会に限界が見え始めているからこそ、夢の動力源開発よりも逼迫した問題である。財団法人石油情報センターによると、未来の石油可採年数はあと40年余りであるとしているが、新規油田の発見や回収率向上などの技術革新で可採年数の増加も期待されるという。

〜経済の縮小を放置する日本の指導者達〜

●しかし例え未知なる新油田であっても、採掘すれば、埋蔵量の半分を過ぎたあたりから生産量は減少し、初期と同量の石油を採るためには多くコストが掛かるようになる。加えて世界で石油の消費拡大が続けば、枯渇はやはり時間の問題である。むしろそれよりも早くに価格の高騰が始まるだろうし、これまで以上に石油が高騰し始めたら、多くの人々にとって現在の自動車は手の届かないものになり、輸送費用が高額になるため庶民の食生活はおろか世界経済すらも縮小に転ずるだろう。

●もともと安価だった石油による大量生産、大量消費、大量廃棄システムは、市民の生活維持というよりも生産者を富ませるためのものであり、石油が安価でなくなった途端に同システムは機能しなくなる可能性が高い。なぜなら、未来の代替エネルギーと目される原子力の原料であるウランも無限の埋蔵物ではないし、水素、風力、太陽光、水力、海洋温度差、メタンハイドレート、オイルサンド、オイルシェールなどいずれにも短所があり、現在の石油に取って代わるには数多くの関門があるからだ。

〜地球温暖化よりもエネルギー問題を解決せよ〜

●ゆえに現代日本にとって輸送エネルギーの削減は急務だ。これは誰もがぼんやりした危機感を抱く地球温暖化よりも、恐ろしくリアルな悪夢である。それなのに再生可能なエネルギー資源に対する政府の取り組みは遅々として進まずその規模はとても小さい。一方で地球温暖化問題を通して近年活況を極める排出権取引は、二酸化炭素の地中や海洋投棄と同じく、地球全体で二酸化炭素そのものをたらい回しにしているだけのマネーゲームに過ぎず、むしろエネルギー問題は人類生存上、待った無しの課題だ。

●しかるに日本政府は、国民がひたすらエネルギーを消費することで、生産者に短期的な利益をもたらす現システムを一向に変える気がないようにも映る。例えば現代の日本は食糧自給率40%なのだが、こうしている今も、エネルギーのひとつと云える資源の大半を捨てることで、経済システムを維持し続けているのだが、こんなことで本当に日本は生き残れるのだろうか。
京都議定書における国際政治力の無さや、論理の欠如が、国際的に日本の立場をより窮地に追い詰めているなか、現実には食料資源すらコントロールできない国内状況が、今日も改善される気配すらない。

〜脱石油社会を迎えてしまったからには〜

●先の米国の地質学者ハバート氏の理論に沿って、2006年5月に経済産業省が公表した「新・国家エネルギー戦略」では、石油生産のピークに関する見通しとして最も悲観的なケース(究極可採埋蔵量=2兆3000億バレル)でのpeak Oilは2015年前後。標準的なケース(同、約3兆2000億バレル)で2030年前後。楽観的なケース(同、3兆8000億バレル)で2035年前後としている。

●一方で石油生産量を決めるのは総資源量ではなく、その時々の需要と供給の関係であり、需要に対して供給が不足すれば、新たな投資と技術開発で供給が増加するのだから、オイルピークは有り得ないという意見もある。しかしハバート曲線は、むしろ悲観的な理論としては捉えずに、長い時間かけて徐々にエネルギー源が代替される客観的な予測であると考えたいものだ。
だからこの曲線が正しいかを論ずるより、資源の需要と供給の関係に対して人間がどんな選択すべきかを問いたいのだ。

〜今こそpeak Oilの本当の意味を考えたい〜

●それは「資源の脱浪費」であり、現代社会の膨張指向、経済成長指向を止めることだ。かつて欧米が非持続的なフロンティア・スピリットを価値観に掲げ、自然破壊的な文明を構築したなかで、日本は江戸時代という完全と云えないが、理想に近いエコロジカルな社会を作り上げている。

●当時として世界で類を見ない巨大な100万都市であった江戸は、美しい自然を持ち、国際的に類を見ない清潔な大都会だった。日本や日本人にはそうした社会を作り上げて世界を救える資質を秘めているのである。幸い多くの自動車ユーザーは、ガソリンの高騰で浪費社会の限界を悟り始めた。

●資源が減退期にあるという現実認識の中で、今後、人として何をなすべきか。脱石油時代を迎えてしまった今、その論点は資源の有り無しではなく、残された「時間」にその問題を解く鍵がある。未来を切り拓けるか、敢えなく終焉を迎えてしまうのかは、現代を生きる人間の対応次第である。

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