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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2007年8月アーカイブ

2007年8月アーカイブ

〜日本の交通環境が危ない〜

●食品業界にも打撃を与えるほど記録的な猛暑となった2007年の夏休みがやっと終盤を迎えている。世間では家庭サービスや帰省など、クルマを積極的使う機会が一段落つき「お疲れモードが未だ抜けきらない」。そんなサンデードライバーの方々が沢山おいでのことと思う。

●さてこの機会にひとつ、想いを馳せて欲しいことがある。それは日本の自動車輸送環境が、現行システム上で「危機的な臨界点を迎えている」こと。そしてそれは未来の「国内経済活動へ大きな影を落としていく」ということ。さらには、エンスージァストたちが「クルマを愉しもうとする環境にも今後、影響を及ぼす」ことになるという可能性にである。

〜異常なトラック輸送への依存率〜

●例えば、社団法人日本物流団体連合会によると、日本国内の物流総量は5,445,574,000トン。そのなかで鉄道や船舶などトラック輸送外が受け持つ総量はわずか8,9パーセントしかない

●これは、BtoBやBtoCなどの事業物流だけなく、CtoCの典型となる宅配便の総量が大きく増えていることも、その一因となっている。一方で、少子化によってトラック輸送を担うドライバーが減少の一途を辿っているだけなく、その労働環境の過酷さは、もはや人間の働く環境という意味でとうに限界を超えている。

〜塩漬けにされたイノベーション〜

●けれど日本政府がこうした事態にまったく無関心であったという訳ではない。筆者が知る限り、日本のトラック輸送の逼迫を懸念し、トラック郵送と鉄道輸送の融合を目指す「モーダルシフト」など、新しいイノベーションへの意欲が語られ始めてから、実はかれこれ20年以上は経っている。

●ただバブル崩壊以降、あらゆる市場環境が厳しい優勝劣敗の構図に組み入れられ、日々エスカレートしていく事業効率や消費者要求に、物流市場がひたすら応えていくなかで、車両積み込み貨物装置の規格統合や手間がコスト上昇要因として嫌われ、未来を担うべきビジョンやイノベーションは永らく塩漬けにされてきた。

〜停滞する日本、進化する欧州〜

●一方、日本では遅々として進まない貨物輸送と鉄道・船舶の融合は、貨物物流を経済活動という切り口だけなく、環境問題として捉えてきた欧州では急速に進化を見せ、トラック車両を貨物列車に丸ごと積み込む「ローリングハイウェイシステム」と呼ぶ輸送手段すら、早くも一般化しつつある。

●このローリングハイウェイというのは、地方都市駅間など特定区間を列車で移動してしまうことで、搭載貨物量あたりのCO2排出量の大幅激減を実現する仕組みで、さらに鉄道区間ではドライバーの労働環境が大きく改善されるという副産物も生んでいる。

〜もはや限界に達したトラックの大型化〜

●ちなみに鉄道輸送におけるCO2排出量鉄道輸送におけるCO2排出量はトラック輸送の8分1であり、また幾らトラック車両が大型化したとしても一挙に60トン以上の貨物が牽引できる鉄道輸送システムのアドバンテージは大変大きい。

●そもそも日本国内においては、大して大型化していないトラック車両だが、例えば東京・首都高速道路は1970年代の設計基準が基礎となっており、際限なく大型車両の通過を許すだけのキャパシティは持ち合わせていない。

〜貨物輸送が自家用車の利用を制限〜

●私たち消費者は宅配便の運ばれる手段について、到着の早さなどの利便性に対する拘りと同じく、そろそろCO2の排出量による輸送手段の選択にも注目した方がイイ。つまりそれは「より早く」だけなく、より「環境に優しい輸送スタイルを選ぶ」という新たな選択肢をつけ加えるということである。

●ドアtoドアへという利便さだけに拘る余り、交通環境をこれ以上悪化させることは、日常生活上でのクルマ利用の便利さを、ナンバー末尾による運転日の制限などを含め、早晩大きく制約を加えることにつながるだろう。

〜物流超特急という先進構想はどこに〜

●そもそも日本は1960年代終盤に、新幹線という当時の世界で存在しなかった未来型輸送手段を完成させるという快挙を実現している国だ。しかもその新幹線構想には本来、貨物新幹線という別構想も含まれていたと聞く。

●かつての中世日本で、物流の主力だった船舶輸送も含め、日本にはこの国に相応しい貨物輸送のかたちがあるハズだ。美しい日本に相応しい日本の物流かたち。それは明治時代以降、ひたすら欧米からのキャッチアップを目指してきた日本が、新しいジャパニーズスタンダードを確立するというスタンスを、世界に向けて発信していくことに他ならないと思うのだ。

〜夢見たクルマ社会はやって来ない〜 

●今年からリニューアル開催される東京モーターショーは、トラックを筆頭とする商用車と、華やかな乗用車中心のイベントとの隔年開催を統合。自動車全域の世界を一望できるものとなった。この夏から秋に向けて、自動車の未来に夢を馳せる際、幕張メッセで「カーデザインや新技術を見る」ということの他、我々自動車を取り巻く世界を広く眺め、より伸びやかにクルマを愉しめる世界とはどんなものなのか。

●かつて少年の頃夢見た未来が未だやってきてないと思える今だからこと、クルマ社会の未来像を私たちは造っていかなければならない。「自動車を愉しむこと」、「あなたが暮らしのなかで理想に思えるクルマを触れること」、それが明日にもやってくる近未来のクルマ社会を創造していくことになるのだから。

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