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マイトガイ「S」の自動車特選街: 2005年1月アーカイブ

2005年1月アーカイブ

●前回EVをテーマにしたのには理由がある。実は今、世界のエネルギー業界では「オイル・ピーク(Oil Peak)」という言葉が流行っている。これは2015年前後に世界の石油生産量が最高値を迎えるという予測だ。
それがどうして問題なのかと云うと、油田開発で石油埋蔵量のピークを超えてしまうと、今度は残り少ない残量を採掘するため、より多くの採掘コストが必要になるからである。

●ちなみに経済産業省のエネルギー統計によると、地球全域で残されている原油採掘年数は40年余りであるという。しかしこれはあと40年間採掘可能ということでない。年数を経れば石油採掘は加速度的に難くなる。そして年々採掘が難しくなると石油価格は確実に高騰する。それがひいては石油資源にどつぷり安住している日本社会の行き詰まりを意味する。

●実際、現時点でも中国経済の拡大で、樹脂原料であるナフサの高騰が続いている。今後さらに石油が高騰すれば私たちの生活は激変するだろう。ゆえに原油を非効率に使う今の自動車のかたちはあと20年もすれば絶滅する。現時点でトラック輸送に依存している国内経済は、輸送コストの高騰で全国津々浦々から生鮮品を取り寄せられなくなる。

●またもうひとつの変化は、1940年代に生まれた「団塊の世代」が、来る2007年頃一気に定年を迎えることにある。これによって社会システムや労働市場だけなく、企業運営そのものに大きな問題が出ると云われている。

●しかしこちらの変化は、確実に減っていく石油埋蔵量とは違って楽観的な見方も可能だ。そもそも団塊世代は、学生の頃のベトナム反戦運動を経て、日本の高度成長を牽引し、バブル崩壊も経験した。そんな彼らは今、ひたすら先を急ぐだけの社会を見直しているよう見える。なかには自然回帰の流れから田舎暮らしを望み、農業を営むことによる自給自足の暮らしを始める向きも増えている。

●一方、日本の企業社会は、労働環境から退陣しようとしている彼らに新しい消費行動を促し、そこから何とか利益を得るべく様々な画策をしている。実際、その数の影響力から、団塊世代は未来の日本をどの方向に導くのか。その舵取りに関して大きな鍵を握っているといえるだろう。

●これまで団塊世代は、空前の軽自動車ブームを体験した後、多彩なクルマを経て高級乗用車へと乗り継いできた。そんな彼らが新たな21世紀においてどんなクルマを選択するのか。それは自動車メーカーの企業構想や将来をも左右する大きな分岐点になると思っている。

●単なる交通機関のひとつとして捕らえると、自動車は数多有る移動のいち手段でしかない。しかしエンスージァストにとってはされど自動車である。クルマの走りを愉しむことはクルマ好きにとっては永遠のテーマだ。

●しかし今日、その最たるものである2ドアクーペやオープンカーなど、いわゆるスポーツ系車両の国内販売数は、2003年時点で約4万4000台でしかない。これは10年前の2割にも満たず、現在の新車販売の1%にも達しないというお寒い環境である。

●そんな逆風のなかでもマツダのRX-8や日産のフェアレディZは、数万大規模の販売数を記録している。このことから、またまだオーナードライバーたちに「走り」に対する熱い期待があることが判る。自動車メーカーにとってもいわばこれらのクルマは「儲け」度外視の商品で、実売り上げ以外の効果を期待するイメージリーダーカーでもある。

●ちなみにこれらのクルマは、搭載エンジンのスペックがパッケージングの善し悪しを左右するほどに重要だが、一方で、欧州カーオブザイヤー2005を受賞したプリウスなど、ハイブリッドカーももはや珍しい存在ではない。もちろんガソリンエンジンの他、欧州で根強いディーゼルエンジンなど、化石燃料で動くユニットが早晩無くなるというわけでない。

●加えてマツダBMWでは水素を燃焼源としたユニットも開発されてもいる。それでも世の自動車ファンのなかには新動力源に夢を持てずにいる向きもあるようだ。確かにいずれは燃料電池など電気をエネルギー源とするユニットが台頭してくることは間違いない。

●しかし既存のガソリンエンジンとはまったく異質なEVユニットには、ゴルフカートぐらいか接したことがなく、電動モーターに良いイメージを持たない向きも多いと思う。しかし電動モーター搭載車の走行フィーリングは実のところ決して棄てたものではない。実際にそのパワーフィーリングを知ると、EVユニットも決して悪くないと思うハズだ。

●これは平成8年に販売されたEV開発初期のトヨタRAV4L V EVでも裏切られることはなかった。電動モーターの高性能ぶりは日本人にとっては新幹線が身近にあるだけに分かり易いと思うが、特に実用速度域でのパワーフィーリングは圧巻で、最近のユニットは最新の鉄道車両に似た動力音を伴いながら、ガソリンエンジンには発揮ではできない加速性能をマークする。

●世界の自動車メーカーではこれを燃料電池システムと組み合わせて搭載していく流れで、現行の車両パッケージをベースとすると燃料電池というしくみは、自動車メーカーにとって最も最適なもののひとつだ。一方、日本ではこれに異を唱える技術者が存在している。慶應義塾大学電気自動車研究室の清水教授はその筆頭だ。

●彼によるとそもそも電動モーターという動力源はガソリンエンジンとは違いとてもコンパクトに造れるため、現行の自動車エンジンと入れ替える恰好で車輪を回すのは非効率だという。ガソリンエンジンの場合、動力源は数100kg以上のユニットとなってしまうし、燃焼の爆発力をタイヤに伝えるにはドライブシャフトや複雑なミッション装置が欠かせない。

●しかしモーターが発揮する動力を余すところなく伝えるには、ホイール内にモーターを内蔵して直にタイヤを駆動してまえば良く、そうなればエンジンの搭載を考えなくて済むため自動車パッケージそのものに大きな革命が起こる。

●この場合高性能なクルマを造るひとつの方法論は、エンジンの気筒数を増やすのと似ていてホイール内蔵のモーター数を増やせば良い。彼らが造る高性能EVが6輪や8輪であるのはこうした理論が下敷きになっている。

●今の燃料電池車は、化石燃料を基とした動力源を永年造ってきた現在の自動車メーカーならではの方法論で、動力源が変わればクルマそのもののパッケージはもっと大きく変わっても良いのはないか。そんな想いが込められているわけだ。

●JR新川崎の沿線沿いにある慶應義塾大学電気自動車研究室には、そうした方法論で造り出されたEVが所狭しと並べられているが、その構想は電動モーターの可能性に大きな夢を抱かせる。EVユニットであっても心躍るスポーツカーは実現可能だ。

●現時点で次世代自動車の展開は既存の自動車メーカー主導で動いているが、実のところ次世代車に対する発想は、固定概念に捕らわれている既存メーカーだけではなく、彼らのような新しい血を必要としているのかも知れない。

●2005年1月1日となった今日。いよいよ「自動車リサイクル法」が本格施行される。これを受けてリサイクル料金や情報を管理する立場である「財団法人 自動車リサイクル促進センター」では、同制度の大枠が固まった2003年中盤以降、突貫工事でシステム開発を敢行。同システム構築に関わった関係者たちは今日、午前9時からのシステムスタートを固唾を飲んで見守っている。

●というのは、同制度のスタートによりシステム上、「自動車メーカー」「車両販売事業者」「解体事業者」間でとてつもなく膨大な処理費用と、それに付随する情報のやり取りが一斉に始まるからだ。それだけに同サーバの構築作業は、一般金融機関の管理システム開発を上回るほどの大仕事となったからである。

●しかしどうして自動車リサイクル法施行にあたり、管理システム開発で金融機関システムのそれを上回る構築作業量を求められるのかと云えば、それは膨大な処理工数に加え、自動車リサイクル促進センターが今日から管理していくことになる天文学的なリサイクル料金ゆえのことだ。

●そのリサイクル料金の内訳には、「シュレッダーダスト」「エアバッグ類」「フロン類」をそれぞれ適正に処理するための費用、またリサイクルの管理に必要な情報管理料金と資金管理料金が含まれる。これらをクルマの所有者が支払うと、その費用は対象車両が廃車になるその日まで、自動車リサイクル促進センターで管理・保管される。

●ただどうやら一般のクルマ社会では、未だ自動車リサイクル法のしくみを充分理解している向きが少ないらしい。そこで一度同法の概略をここでいちから説明しておきたい。まずその趣旨だが、自動車リサイクル法は循環型の社会をつくるため、自動車メーカー、輸入業者、販売事業者、車両の所有者がそれぞれの立場で車両の再利用を進めていくという趣旨の法律である。

●この自動車リサイクル法では、車の所有者がリサイクル料金の支払いと廃車時の引取業者への引渡しを担い、自動車メーカー&輸入事業者はシュレッダーダスト、フロン・エアバックなどのリサイクルや適正な処理を促す。

●自動車整備事業者は、リサイクル料金の預託業務を。引取業者は車両の最終所有者から使用済み車の引き取る業務。フロン類回収業者は使用済車からのフロンを完全回収する役割を。解体業者は使用済車の解体。破砕業者は解体された車のプレス・せん断・シュレッダー処理を担う。

●そして原則として、2005年からすべての四輪車の所有者は、これらの作業に必要なリサイクル料金の支払いが義務付けられる。ちなみにこれは新規の車両購入者だけではなく、既存車両所有者にも初回車検や廃車の際に支払い義務が発生する。問題の料金の支払先は、販売店や引取業者などを経由して「自動車リサイクル促進センター」に支払う恰好だ。でこの自動車リサイクル促進センターとは、国から指定を受けた資金管理法人なのである。

●資金管理法人の自動車リサイクル促進センターでは、この処理費用のプールと管理を2005年の今日から開始する。詰まるところ、集まった処理費用のプールは実質的には政府で管理されていくという構造で、この膨大な資金の行方、その運用先がどうなるのかは、その支払い対象者の多くが選挙権を持つ一般ドライバーたちゆえ、気に留めておいた方が良い話題だ。

●集まった資金の運用が、第二の郵貯や、高速道路料金のようにならないことを祈りたい。それと余談だが使用車両を廃車すれば、預けた費用はリサイクル料金に使われることとなるが、所有車両を売った場合、預けたリサイクル料金は払い戻しが可能になる。ただしこれは車1台に付き1回のみの措置。つまり幾ら旧い車両でも、オークションなどで売却するなら、車両のリサイクル費用は新しい所有者が改めて担うというかたちになる。

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