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トヨタ・レクサスを阻む日本の壁 - マイトガイ「S」の自動車特選街

トヨタ・レクサスを阻む日本の壁

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●米国建国以来の快挙を日本市場で再び

新世紀の到来を目前にした米国内で、建国以来初の事件が起こった。それは同国の自動車市場でピック3を押しのけ、日本の「Lexus」が高級車マーケットを征したことだ。そのレクサスが次なる目標にしたのが、永年ドイツ車の草刈り場となってきた日本の高級車市場だ。トヨタは、2004年のデトロイトショーで新型の4WDセダン「GS」を発表。翌2005年からは、日本を舞台にレクサス網の本格展開を開始している。

●販売計画に到底届かない日本のレクサス

しかしむしろ、こうした動きは、かえってドイツ車の販売台数を大きく伸ばす結果を招いている(メルセデス前年比132.5%、BMW前年比122.9%増)。一方、日本のレクサス車販売は昨年末の販売累計で1万293台。今年上半期でも約1万600台余りと、当初計画のほぼ半分にしか達していない。実のところこれまで、新車発表で着実な計画数字を発表してきたトヨタが目標値をこれだけ大きく外すケースは希だ。2005年8月のブランド立ち上げ時に公言した「年末までに販売2万台、受注2万5000台」は、トヨタが考えていた以上の難関だったようだ。

●主力車種を欠くなか米国帰りの神通力も通じず

ちなみに目下のところ、日本国内におけるレクサス網の主力販売車種は、米国における「RX」ことハリアーや「ES」ことウインダムとは違う。日本国内ではアルテッツァと呼ばれていた「IS」や、先の「GS」が主力だ。つまり対象国が違えば、同じレクサスブランドでも主力販売車種は大きく違うのである。米国・日本のいずれの市場も対象は富裕層ではあるが、主力の販売車種が違い米国は、比較的大量販売が望み易い環境にある。

●苦戦しているなかでも強気の販売計画を堅持

加えてレクサスが苦戦している理由はもうひとつある。それは最高峰車種「LS」の投入が遅れていることだ。
フラッグシップモデルを欠く日本のレクサスは立ち上げ当初、対象消費者を絞り易い雑誌広告を中心にイメージ訴求のみに終始した。それでもイメージ先行策は一定の功を博し、一時期は販売目標も達成したのだが、ISの最低価格帯でも販売価格は400万円に迫るため、契約の意思決定に時間が掛かかり販売台数が伸びなかった経緯がある。こうしたなか2006年1月、GS発表後2年目を迎えたデトロイトショーで待ち焦がれていたLSが遂に発表。これを受けてトヨタは今年のレクサス販売計画を4万台とし、いまだ強気の販売設定を崩していない。

●ソフトを売るという新ビジネスが強気の理由

その強気の理由のひとつは、レクサスがこれまでの自動車ブランドとしては「希有な商品性」を備えていることにある。というのは、レクサスというクルマを持つ喜びを、「クルマ以外のもので提供する」というスタンスを持っているのである。例えば搭載されるハンズフリー電話は、24時間365日、レクサスオーナー専用のコールセンターにつながる仕組み。

コールセンターでは、自動車の各種設定や操作方について聞くだけに止まらず、レストランやホテルの紹介や予約、航空券の手配までしてくれる上、万一クルマが故障すると新幹線や飛行機プレミアムシートも。宿泊するのであれば帝国ホテルクラスの宿泊費が保証される。要はかつてロールスなど超高級車で行われていたサービスが、現代のIT環境を駆使して受けられるのだ。
つまりもはやレクサスは「自動車というモノを売る」のではなく、近年の高額不動産物件と同様のスタンスで、自動車生活という「ライフスタイルを売る」というスタンスなのである。

●最上級のトヨタ車がレクサスであることを証明せよ

こうしたサービスはかつて日本のヤナセにあったし、昔にNSXをホンダが始めた時、NSXオーナーがホスピタリティを求めて足繁く店頭に訪れ、1台でも販売台数を稼がなければならないセールスは対応に苦慮したという話もある。しかしNSXを買うオーナーは他にもフェラーリやベントレーなどの高級車を持っているケースが多いはずで、そうしたオーナーはクルマを買った後のケアの方が、むしろクルマそのものよりも重要だったりする訳だ。

けれどもそんなすばらしいケアがあったとしても、日本でのレクサスは当面苦戦を強いられるはずだ。というのは結局、レクサスは詰まるところトヨタ車だからだ。レクサスが日本で成功するためには、リコール問題で揺れるトヨタ自身が、このクルマは最上級のトヨタ車であると保証できるかどうかにある。

●改めて問われるモノ造りメーカーの志とひたむきさ

また同じレクサスでも、2005年8月に発売されたかつてのソアラである「SC」は、発売後わずか2カ月で約700台の販売台数をマーク。2004年度の販売実績だった696台を大きく超えた。

SCは変速機を5速から6速に改良し、テレマティクス機器を搭載し旧来より50万円高い車両価格680万円で売り出したもの。一方アリストをベースに内外装やエンジンなどを大幅に替え、価格を150万円以上引き上げたGSは、小幅変更しかしていないSCに販売目標であえなく敗れ去った。
それはなぜか。そもそもSCの方がモノ造りに迷いがなく、ハードウェアとしてのコンセプトや志が消費者にとってピュアで判り易かったからではないのか。

●日本市場の壁を越えること。それが世界一への突破口になる

メルセデスやBMWが当面の強力なライバルには違いはないが、日本市場には米国とは違う日本独自のクルマ文化がある。アメリカで売れているから、そのまま日本に持ち込めばイイと考えているところは疑問で「量より質」を強調してもコンシューマがついてこなければ空回りする。アルファベット2文字となった車名など、いずれも日本市場に合わせたマーケティング戦略を組まなかったことに原因があると思えてならないのである。

あくまでも比較論ではあるが、同じモノ造り企業で世界ブランドとしてかつては成功した国内企業にソニーがある。そのソニーも近年、「ハードウエアで世界をリードする」という創業時の目標が薄らいでいるように見える。事実ソニーの新製品からは、かつての「ウォークマン」や「プレステ」のように市場を揺るがす夢の大きさが伝わってこない。翻ってレクサスが北米で幾ら成功したとしても日本国内の壁は依然厚い。しかしそれを超えることが出来なければトヨタは本当の世界一にはなれないだろう。

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このページは、kenjiが2006年7月31日 01:33に書いたブログ記事です。

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