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カーテレマティクスが創る未来社会とビジネスチャンス - マイトガイ「S」の自動車特選街

カーテレマティクスが創る未来社会とビジネスチャンス

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●日産ディーゼル工業とコマツが、商用車向けテレマティクス事業での提携を発表した。これはコマツが開発した「コムトラックス」という建設機械用テレマティクスを基礎に、商用車向けのシステム開発を推進していくというもの。日産ディーゼル工業は、これを2006年度中に商品化し、国内販売していく日産ディーゼル工業のトラック全車種で標準採用する見込み。初年度の販売計画は1万台という。

●このテレマティクスというのは「telecommunication(通信)」と「infomatics(情報科学)」を組み合わせた造語だ。自動車向けの次世代情報提供サービスとしてはカーテレマティクスとして世の中では通っており、一般には「クルマ版Iモード」というと分かり易いかもしれない。

●ただし携帯電話のコンテンツサービスは、無限に広がるインターネットとは隔離された世界だ。対してカーテレマティクスの場合は、インターネットを通してメールやオンラインゲームを愉しむだけでなく、天気予報、映画観賞、グルメ情報、宿泊情報など広くクルマを取り巻く周辺環境を大きく解放していこうとする目的がある。目下カーナビに関わるコンテンツ企業は、この新サービスに関わるインターフェイスを鋭意積極開発しているし、自動車メーカー各社ではテレマティクスを顧客囲い込みの切り札に使うべく着々と準備を進めている。

●それはTAS(テレマティクス・アプリケーション・サーバー)で、顧客のクルマをモニタリングしてトラブル手配を担うというものだ。ちなみにトヨタがテレマティクス展開を行う「G-BOOK」対応の情報端末は、パソコンとの間でもデータを受渡しできるほか、コンビニのマルチメディア端末との間でもデータのやり取りも可能にしていく。

●これは将来、無線通信網を使うことで故障時の自動通報や消耗品部品の交換を促すなど、新ビジネスチャンスの原資となる。先のG-BOOKや日産のカーウイングスは、こうしたサービスを展開するためのインフラ網という訳だ。

●これを逆に捉えるとテレマティクス展開というのは、既存のカーディーラーを介したビジネスモデルのなかで、消費者が見えなくなってしまった自動車メーカーのあせりだと捉えることもできる。
かつて自動車は「持つこと」そのものに夢馳せることのできる商材だったはずなのだが、もはや自動車に対するカーユーザーの認識や会社を取り巻く環境は大きく変わってしまった。自動車もいずれはPCなどの耐久消費財と同じく、それを使って何を生み出すか、どんなビジネスチャンスを生むのかを模索するマーケティング商材のひとつとなってしまうのだろう。

●近年、カーディーラー各社では車両販売の新しいかたちとして、個人リースを積極的に推進しているが、そのうちカーユーザーの自動車に対する捉え方から「所有する」という概念が消失してしまうかも知れない。そうなれば自動車メーカー自らが中古車流通に注力している現在の努力も、リース期間終了地の中古車マーケット確保という面で大きく実を結ぶことになる。また誰もが新車をリースで導入するということになれば、今後、車両の価格高騰はさらに加速される可能性もある。

●一方、商用車向けのテレマティクス網は、車両を所有している事業者に大きなビジネスチャンスをもたらす可能性がある。それは今のところCD-ROMやDVDディスクから地図情報を読み出すだけのカーナビなどの車載端末が双方向通信の機能を持つことになるからだ。

●そしてそれは2000年から2015年頃までを4フェーズに分けて進められてきた政府のITS計画と融合することを意味する。なかでもITS計画の第3フェーズは、車載カメラやセンサーから情報を収集。出会い頭の衝突防止、カーブの速度超過、車線逸脱を戻すなど夢の自動運転を実現するためのインフラ整備を担っているからだ。

●この仕組みを支える道路はスマートウェイと呼ばれ、路面に自動車との通信を行なう通信機器が光ファイバー通信網を介して組み込まれる見込みだ。日本ではすでに1996年、開通前の上信越自動車道走行実験が成功している。

●当然、対象となる車両もこのシステムにあわせて、多数のセンサーを搭載することになるのだが、そうした輸送車両はいわば全国各地を移動する「情報収集機」でもある。このことから輸送車両が日本全土の渋滞や積雪・冠水、路面補修の必要性などを集約。ネットワークを介して情報を発信するビジネスが生まれるのではないかと考えている。

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コメント(3)

> 対してカーテレマティクスの場合は、インターネットを通して....

今のインターネットの危険度についてメーカー各社はどのように考えているのでしょうか?
自動車メーカーの方とは話をしたことはありませんが、ときどきネットワークの世界ではない開発者の方は、
あまりにもセキュリティについて安易に(というか全く知らない)考えていて、唖然とさせられることがあります。
kakaku.comを見ても判るように、対策がないのではなく、昔から言われていたのに知らないだけなのです。

●貴重なコメントありがとうございます。昨今はATM問題を筆頭にインターネットやワイヤレスネットワークの危険指数が上昇し続けています。
現在の自動車はそうした脆弱なインターネット網を利用している訳で、クルマに乗る多くのユーザーはテレコミュニケーションには無関心な層も多く今後格好の標的になる可能性があります。

●特に車載機から発信するネットワークの質から見て、まずは個人情報の窃盗が心配なところです。それに日本はかねてより無線通信網に関する管理が甘くそこも気になります。
ちなみに自動車の世界では、国内のITS網を仕切る三菱電機が無線通信には熱心なようですね。彼らは目下自衛隊が使う暗号化技術を開発しているそうですが、自動車通信網のセキュリティ性については取材時に突っ込んだ質問をできていません。

●いずれにしても自動車分野は、インターネットの脅威に対して遅れを取っていることは間違いなく、目下のところそれぞれの関連企業がここ5年〜10年先の未来に向け、別々の方向に走っているようにも見えます。少なくともインターネットの危険度についてはカーユーザーに向けて、いちライターとして機会がある毎に研究を重ねて情報発信していきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。

miteguy_Sさん、
ご返事ありがとうございます。

> まずは個人情報の窃盗が心配なところです。

通信経路上の盗聴もですが、詐称も考慮しなければなりません。
要は、オレオレ詐欺です。
例えば、情報ダウンロードしてカーナビに自動セットし到着したつもりが、
その情報は詐称されていたなど、使われるシーンが多彩なので、
相当深い対策と仕組みが必要と思います。

今後の取材を期待しております。

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このページは、kenjiが2005年7月15日 16:06に書いたブログ記事です。

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